クッシング症候群の初期症状は意外に見落としがちで悪化してから気づくこともあるので、日頃から愛犬の健康状態を確認してあげなくてはいけません。
クッシング症候群になってしまった場合は、動物病院での治療に合わせて食事療法で体内に過剰になってしまう物質を排除して、大幅に不足してしまう栄養素を補給してあげる必要があります。
今回は、食事療法を中心にクッシング症候群について幅広くご紹介致します。
クッシング症候群とは
クッシング症候群とは犬の内分泌系の病気で副腎皮質機能亢進症とも呼ばれます。
基本的にクッシング症候群は病気によって引き起こされるものと、ステロイド剤の過剰投与等の医原性(医療を受けたことによって引き起こされる)の場合の2つの原因が考えられます。
クッシング症候群はどんな病気?
犬の体内で糖の代謝を助ける役割を果たしている副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が通常より多く分泌されてしまう病気です。
クッシング症候群の原因
クッシング症候群は、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の過剰分泌が原因で引き起こされる病気の総称であり、一言でクッシング症候群と言っても様々な病気があります。
犬のクッシング症候群を引き起こす原因となる病気は、脳内の下垂体腺癌や下垂体腺癌腺腫、または副腎内の副腎皮質腺癌、副腎皮質腺腫等の腫瘍である場合が殆どであり、その8割以上が脳内の癌(腫瘍)であると言われています。
また、腫瘍等の病気が原因でなくステロイド薬の過剰摂取、または長期利用等によってクッシング症候群を引き起こす場合があり医原性の原因である場合があります。
ステロイド剤は基本的にアレルギーや癌、免疫不全に関わる病気で利用されることが多く長期で使用しなくてはいけない事があるため注意が必要です。
どうして副腎皮質ホルモンが過剰分泌される?
通常は副腎皮質ホルモンを分泌する時に脳から副腎にホルモンを出すように指令が行き、指令を受けた副腎はこのホルモンを必要な量だけ出します。
この時、腫瘍を中心とする病気が原因で脳からの指令や副腎での指令の受取が正常に機能しなくなり、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されてしまいます。
病気が原因ではなく医原性(ステロイド薬の過剰摂取等)の場合は、体内でホルモンを分泌するのではなく、薬によって外部から必要量より多い量のホルモンが入ってくる為犬の体内の副腎皮質ホルモンが過剰に増えてしまいます。
クッシング症候群の初期症状とは?
犬のクッシング症候群の症状は多数ありますが、初期症状で現れやすいのが多飲多尿、過剰な食欲増加です。
<その他の初期症状>
- お腹が膨れ上がる(または垂れ下がる)
- 左右対称性の脱毛(体の左右の毛が同じように抜ける)
- 被毛が乾燥している(弾力性が無くなる
- 足腰に異常が出る(筋肉の減少によるもの)
- 運動を避けるようになる(筋肉の減少によるもの)
- 呼吸が荒くなる
クッシング症候群の食事管理
クッシング症候群の犬の場合は動物病院での治療と合わせて食事管理をすることが大切です。
手作りご飯を与える場合は、栄養素が偏らないように定期的に血液検査で健康状態を確認しながらクッシング症候群の症状に合わせて食事を与えることをお勧めします。
またドライフードを与える場合はしっかりとフードの見直しを行い、サプリメントで不足しがちな栄養素を補うと良いでしょう。
基本は低脂肪の食事!
犬がクッシング症候群になった時の食事管理の基本は低脂肪の食事を心がけることです。
クッシング症候群になると副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールが過剰に分泌されて高脂血症になることがあります。
高脂血症は、犬の血液内のコレステロールと中性脂肪(トリグリセリド)が増加傾向となるため食事でコレステロールや中性脂肪の値を減らす必要があります。
高血糖防止のための食事
クッシング症候群の犬は、高血糖になりやすく糖尿病を併発する場合があるので糖質制限をする必要があります。
定期的な血液検査で血糖値の値(GLU:グルコース値)を確認しながら、血糖値が増加傾向にある場合は糖の吸収を防ぐ食物繊維質量の多い食事を心がけると良いでしょう。
手作りご飯やトッピングご飯で野菜の食物繊維を利用する場合は、食材をしっかりと細かくして犬が消化できる状態にして与えましょう。
その他体への糖吸収を防ぐ役割を補う食材は、玄米やイモ類等の体内で消化されにくい炭水化物も有効であると言われています。
タンパク質が不足しない食事
クッシング症候群の初期症状として左右対称性の脱毛や筋肉の低下についてご紹介しましたが、これは病気によって体内のタンパク質量が低下することによって引き起こされる症状です。
タンパク質は筋肉の維持や皮膚、被毛の健康維持に欠かせない栄養素ですので、クッシング症候群で不足しがちなタンパク質を食事で補給してあげなくてはいけません。
質の良い食事を与えよう
クッシング症候群に関わらず犬の健康に害を与えやすい「酸化した食事(主に脂肪分の酸化)」を避けるためには、ドライフードであればその品質や梱包状態をしっかりと考慮しましょう。
ドライフードを始めとし、食材は長く空気に触れることによって酸化して健康に害を与える要因となりますので長期保存されたドライフードや密封性のない梱包状態のドライフードは避けた方が良いでしょう。
その他、高脂血症防止のためには一般的にオメガ3脂肪酸が配合されている食材が良いと言われていますが、オメガ3脂肪酸が含まれている食材は基本的に脂肪分が多いので注意しましょう。
免疫力が上がる食材を使おう!
クッシング症候群に関わらず免疫力が低下していると病気が悪化しやすくなります。
先述でクッシング症候群の8割以上が脳内の癌によるものであると説明しましたが、根本的に癌や病気と闘うためには健康体の犬以上に免疫力について配慮しなくてはいけません。
<免疫力を上げるための食材とは?>
- 腸内環境を整えて免疫力を上げる・・・山芋、里芋、オクラ等
- 抗酸化作用のある食材・・・納豆、黒ごま、とまと等
- 体を温める食材・・・れんこん・ごぼう・にんじん等
ドライフードを与える場合は、犬用の免疫力向上のためのサプリメントを活用するのも効果的です。
まとめ
犬がクッシング症候群になってしまった場合は、動物病院で病気の根本的な治療を行いながら適切に食事管理を行うことが重要です。
食事管理を行う際には
① 病気によって体内に過剰に作られてしまう物質を減らす
② 不足しがちな栄養素を補給してあげる
ことが大切です。
クッシング症候群によって乱れがちな体内環境を正常値に戻すための食事を心がけてあげましょう。