犬が体をかいている仕草を見かけたことはありませんか?
多くの犬は日常的にこのような仕草をしますが、もしかしたらそれは「痒い」のサインかもしれません。
犬が痒がる原因は、季節的な乾燥や換毛期のホルモンバランスによるもの、病気が原因である場合等様々です。
重度の病気の可能性もあるので、しっかりと犬が痒がる原因を突き止めて治療を行うことが大切です。
犬が痒い時のサインを見逃さないで!
犬は痒い時に前肢や後肢で「掻く」仕草をしますが、犬が痒がる仕草は実はこれだけではありません。
皮膚を噛むような仕草をしたり、壁や床に体を擦りつける、また耳の中が痒い時には首をかしげるような仕草、頭を振る仕草をしたりすることがあるので、犬の「痒い」サインを見逃さないことが大切です。
犬の皮膚は被毛で覆われているため、発疹等の症状には意外に気づきにくく、飼い主が気づいた時には既に症状が進行している場合もあります。
「痒い」という事は、皮膚だけでなく体の内部で何かしらの異常が発生している可能性もあるので、「痒い」というサインに早く気が付いてあげることが早期治療においてともて大切です。
アレルギーが原因の痒み
通常犬の体は、特定の物質に対して自分の体に有害であると判断した時にそのアレルゲンを体から排除しようと免疫機能が働きアレルギー症状がおこります。
しかし、犬の体に特に有害でない物質に対してもアレルギー反応が過剰に出てしまうとノミアレルギー、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎等が引き起こされます。
ノミアレルギー
犬が痒がる原因で非常に多いのがノミアレルギーによるものです。
ノミアレルギーは犬がノミに噛まれた時にノミの唾液の中にある物質に対して体がアレルギー反応を起こす為、痒みを伴う皮膚炎が起こります。
原因となるノミの種類は数多くありますが、国内において多くの場合ネコノミが原因であると言われています。
症状としては痒みと同時に脱毛や発疹が現れることがあり、ダニの寄生率が多いと睡眠傷害が現れたり貧血状態に陥ったりすることがあります。
食物アレルギー
食物アレルギー(食物過敏症)はアレルギー疾患の中では3番目に多いと言われており、食事として摂取した食物に対して犬の体の免疫機能が過剰に反応することによって引き起こされます。
アレルギー反応を起こしやすい食物は、タンパク質、糖タンパク、リポタンパク、ポリペプチド等様々で犬によって反応しやすい物質が異なります。
食物アレルギーになると、激しい痒みに加えて消化器症状(嘔吐下痢等)が現れることが多く、食後すぐに体に異常が出る場合と数時間から数日後に症状が出る場合があります。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、ほこりやダニ、花粉等のアレルゲンを犬が鼻や口から吸い込んだ時に体が敏感に反応してしまうことによって起こる皮膚炎です。
アトピー性皮膚炎になると非常に強い痒みを伴うことが多く、犬はしきりに体を掻くようになり皮膚がただれたり傷ついたりするので注意が必要です。
アトピー性皮膚炎は症状が治っても再発する危険性が高いので、食事管理や生活環境を見直す必要があります。
内臓の病気が原因の痒み
痒みを伴う可能性がある病気で非常に気づきにくいのが肝臓や腎臓の内臓疾患です。
肝臓や膵臓に何かしらの疾患がある場合、皮膚が非常に過敏になりやすく皮膚炎を併発しやすい状態になる為、内臓疾患と皮膚疾患は切り離せない関係にあります。
また、心臓病である場合は痒みというよりも体の表面が痺れることにより犬が違和感で体を掻くような仕草を見せることがあります。
外部寄生虫が原因の痒み
皮膚病を招く外部寄生虫はダニ類と昆虫類(ノミやシラミ)に分けられ、皮膚に寄生して犬の血を吸ったり組織液を吸引したりすることによって犬の皮膚病を引き起こします。
疥癬症(かいせんしょう)
疥癬症とは、ヒゼンダニというダニが犬の皮膚に住みついてしまう病気で人間にも感染する寄生虫の為注意が必要です。
主な症状は皮膚が固まり痒みを引き起こして、発疹やフケが現れますが、重症化すると固まった皮膚の下にもヒゼンダニが寄生するので早めの治療が必要です。
治療はダニを殺すために抗生物質の投与や外用薬、薬浴の使用が効果的で、必要に応じて痒み止めの投与も行われます。
再発の危険性が高いため、犬の皮膚が完全に元の状態に戻るまでしっかりと治療する必要があります。
毛包虫症(もうほうちゅうしょう)
犬の皮膚には根本部分に皮膚がありますが、この皮脂に毛包虫というダニが多数寄生することによって皮膚炎や脱毛が起こることを毛包虫症と呼びます。
初期症状に気づきにくく、症状が進行して飼い主が脱毛に気が付いた頃に痒みを伴うことが殆どです。
母乳による感染が多いため、多くの場合が成熟前の仔犬に発症します。
最近やカビが原因の痒み
犬の皮膚病は細菌やカビの繁殖によっても引き起こされ、
膿皮症
膿皮症は、犬の皮膚(表面、皮脂腺、毛包、アポクリン腺等)に菌が住み着くことによって発症します。
住み着く菌の種類が多く、一例としてブドウ球菌、緑膿、連鎖球菌が挙げられ、痒みに加えて、丘疹、フケ、皮膚の化膿等が症状として現れることがあります。
治療方法は一般的に内科療法によって細菌の繁殖を抑える、痒みや炎症止めを投与する方法が一般的です。
真菌症
真菌症は胞子状の菌の感染によって発症し、感染すると非常に激しい痒みや脱毛が現れますが、初期症状で痒みが出ない場合が多く進行すると痒みが非常に強くなるので注意が必要です。
通常脱毛は円形状(リングワーム)ですが、症状が進行するにつれて全身に脱毛が広がります。
一般的に免疫力が低いと感染しやすいため、仔犬や免疫力が落ちている病気の犬、シニア犬等がかかりやすいと言えます。
アレルギー性皮膚炎とその他の皮膚病の見分け方
アレルギー性皮膚炎には、主にノミアレルギー、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎の3つがあることをご紹介致しましたが、犬が痒がっている場合にアレルギーによる皮膚炎であるのかアレルギーとは関係のない皮膚病であるのか悩む飼い主さんも多いと思います。
アレルギーのみならず皮膚炎が怒っている場合には痒みが伴うことが殆どですが、
皮膚病によっては初期症状として痒みを伴いにくいものもありますが、アレルギーの場合は殆どの場合痒みを伴います。
また、アレルギー性皮膚炎の場合は非常に再発率が高く、継続した治療が必要となります。
<アレルギーで痒みと同時に現れやすい症状>
・ノミアレルギーの場合
体表の脱毛(主に耳の後ろから背中、尻尾から肛門周辺)
赤っぽい発疹(主に耳の後ろから背中、尻尾から肛門周辺)
・食物アレルギーの場合
発熱、下痢、嘔吐
・アトピー性皮膚炎の場合
皮膚が乾燥して厚くなる(前脚内側、後脚の外側)
健康体の犬が痒がる原因
犬が痒がる原因は一概に病気が原因であるとは言えません。
一時的に皮膚の乾燥で痒みが現れたり換毛期によって痒みが現れたり、シャンプーやリンスが合わず痒がることもあります。
皮膚の乾燥や換毛期の痒み
犬が痒がっている姿をみると皮膚病を中心とした病気をまず疑いますが、実は健康な犬であっても痒がっているような症状が現れることがあります。
理由としては、単純に季節的に乾燥しやすい、また犬の皮膚内の必須成分であるセラミドが不足していることが原因で痒がることもあります。
また、換毛期には甲状腺ホルモンに異常が出て痒みを引き起こすこともあり、一概に犬が痒がるからと言って病気であるとは断言できません。
まとめ
犬が痒がる原因について代表的な病気を中心にご紹介致しましたが、犬の皮膚病は非常に多くみられ、長年動物病院の受診理由の上位を占めています。
進行して重度の皮膚病になってしまうと完治するまで非常に時間がかかり、激しい痒みや痛みによって犬の日常生活に支障をきたします。
犬が痒がっている仕草を見せたら、早めに検査を行い生活環境の改善や免疫力が低下しない食事管理を行ってあげましょう。