老犬は食事量が減る傾向にあり日によっては全く食べない事もあります。
食事は健康な体の構成要素に非常に大切で、食欲不振により体の栄養バランスが乱れると老化を進行させたり病気を悪化させたりします。
今回は老犬に必要な食事量や回数を含めた基本内容、また食べない時の対処法や介助方法等幅広くご紹介致しますので、老犬の食事でお悩みの飼い主さんはご活用ください。
老犬の食事量は?
老犬の食事量を決める時に一番大切なのは、活動量に合わせたカロリー摂取量を決めることです。
活動量(運動量)に合わせて食事量を決めるので、運動量が低下していない健康体の老犬の場合は成犬時同様の食事量で問題ありません。
最近では、インターネットでそれぞれの犬に必要な1日のエネルギー量計算が自動でできるフリーソフトもあるので、個々に合わせた目安量を知りたい場合は活用すると良いでしょう。
年齢や飼育環境、運動量や体重を換算して1日の必要エネルギー量を計算してくれるソフトもあります。
老犬の食事回数は?
老犬によくある事ですが、歳を取ると1度にたくさんの量を食べない事があります。
健康な老犬であれば成犬時同様(基本1日2回)で大丈夫ですが、1度に少ししか食べない場合は1日3~4回に分けて与えましょう。
老犬にとって食べることは体力を使う作業であり、食べるスピードも遅いことから食事すること自体に疲れを感じ食事を残す犬もいるので、ゆっくり休ませて食事回数を増やしてあげましょう。
老犬が食べない時の対処法
日によって老犬が食事を食べないことは良くある話です。
その場合は病気が原因である場合と食事内容に問題がある可能性が考えられるので、まずは病気を疑って動物病院で検査することをおすすめします。
病気の可能性がある場合はまずは検査を!
病気が原因で食欲不振になっている場合は食事内容を変えてもあまり効果が出ないことがあるので、病気の治療を最優先で行い治療の一環として食事内容の配慮をしましょう。
器の位置に注意しよう!
衰弱傾向にある老犬の場合は食事を摂る際の姿勢によっても負担がかかり、小さな不都合で食事を拒否することがあります。
脚や首の筋肉量も減少傾向にあり低い位置から食事を摂ると飲み込むのも大変なため、食事をする器(食事台)の高さに配慮してストレスなく食事できるように工夫してあげましょう。
通常犬に負担がかからない器の高さは、犬の首が下方向に向かず水平な状態で食事を摂ることができる高さで、高すぎても低すぎても老犬には負担になります。
嗜好性の高い食事にしてみよう!
人にも犬にも味覚を感じる為の「味覚細胞」というものが備わっていますが、実は犬の場合はその味覚細胞が人間の約1/5~1/6程度であると言われ人よりも味には鈍感です。
老犬の場合は、特にこの味覚細胞の衰えに加えて嗅覚が鈍り食事を美味しいと感じにくくなりますので、香りの強い嗜好性の高い食事に変更することも対処法の1つです。
食事全てを味が濃いものに変更することは健康面でリスクを伴うので、犬が好みやすい肉や豆乳、ヤギミルク等を通常のご飯にトッピングして様子を見ることをおすすめします。
水分を加えた食事にしてみる
ドライフードであればぬるま湯でふやかしてから人の手の温度までしっかりと冷まして、スープご飯にする事も犬が食べない時の対処法の1つです。
一般的にドライフードはぬるま湯で温めることによって香りが強くなり、嗅覚の鈍った老犬であっても食欲が回復する事があります。
ぬるま湯でふやかしても食べない場合は、肉汁、無調整豆乳やヤギミルク等の犬が好みやすい香りの飲料を使用してスープご飯にしてあげるのも良いでしょう。
水分が多いスープご飯は、特に水分補給が苦手な老犬にとっても最適です。
ドライフードであれば、ふやかして与えることによって水分も摂取でき消化もしやすくなります。
なお、食事にぬるま湯を利用する場合は、暑いお湯は避けて少し暖かい程度のお湯でゆっくりとドライフードをふやかしましょう。
熱湯でふやかすと栄養素が崩れてしまいがちで、老犬の健康維持に悪影響を及ぼします。
甘さを加えた食事にしてみる
犬の味覚細胞は甘いもの(糖)に過敏に反応するため、普段の食事に甘さを取り入れることで食欲のない老犬が食事を口にすることがあります。
主に「A群レセプター(糖に対して反応を示す受容器)」が機能して、糖の一種であるショ糖に対して犬は敏感に反応を示すので、犬が食べない時の対処法として甘味を利用すると効果的です。
その際は、人工で作られた甘味でなく果物に含まれる果糖を利用すると犬の健康にとっても良いでしょう。
人工で作られた甘味には犬にとって苦味に感じる成分が配合されていることが多いので、逆に食べなくなってしまう可能性があります。
果物(細かくしたバナナや摩り下ろしたリンゴ等)に少量の水を加えてドライフードにかけて与えるのも効果的です。
歯の状態に合わせた食事にしてあげる
老犬の場合は歯周病、虫歯、口内炎を中心とした口腔内の炎症によって痛みや不快感から食べない事があります。
歯や口腔内炎症(歯茎の腫れや赤み、出来物等)を確認して、異常がある場合は早めに獣医師に相談しましょう。
この場合は、応急処置として柔らかいご飯に変更、ドライフードをふやかして歯や歯茎に負担がかからない食事内容にしてあげましょう。
低たんぱくの食事に変更する
健康な老犬であれば低たんぱくの食事に変更する必要はありませんが、病気(特に肝臓病や腎臓病)の場合、また運動量が著しく減っている老犬には低たんぱくの食事がお勧めです。
食事を食べない老犬の多くは内臓機能が病気によって低下している為、高たんぱくの食事が内臓に負担をかけている可能性があります。
シニア用フードの殆どが低たんぱくですので、このような場合は早めに切り替えてあげましょう。
老犬の食事介助の仕方
老犬の食事介助の仕方は犬の状況によって様々ですが、どんな状況であっても老犬にとって食事を摂ることが負担にならないように工夫することが第一優先事項です。
日々犬の様子をしっかりと観察し不憫がないよう、人目線ではなく老犬目線で考えて介助してあげましょう。
寝たきりで自力で食事を摂ることが出来ない場合は流動食を与えますが、流動食は動物病院で処方してもらえます。
病院で処方されない場合は市販で購入、またはドッグフードを利用して作ってあげましょう。
流動食の作り方
STEP1:
すり鉢等利用してドライフードを細かくすり潰す。
STEP2:
常温の水を含ませ流し込みやすい状態にする(目安:ドライフード1に対して水1)
流動食を与える際の介助方法
STEP1:
犬の体を起こしてあげます。
STEP2:
食事が口からこぼれても犬が汚れないようにペットシーツやまいかけを使います。
STEP3:
上半身に対して頭が高い位置に来るように固定します。
この時、顎だけ高い位置にするのではなく頭部全体を高い位置にすることが大切です。
老犬は食べ物を飲み込む力が弱いため体に対して頭が低い位置になってしまうと、気管に食料が入ってしまったり食道に食物が詰まったりするので危険です。
気管支に入った場合は窒息や肺炎を起こす原因になるので注意しましょう。
STEP4:
犬の口のサイズに合ったスプーンを利用して流動食を少しずつ口に入れます。
スプーンで食べない場合は、シリンジ(注射筒)を使って喉の手前まで流動食を流してあげましょう。
一度にたくさん与えると食道に詰まる危険性があるので、少しずつ時間をかけて与えましょう。
流動食が飲み込めていない場合は、水を少量流してあげると食事が喉を流れやすくなります。
STEP5:
しっかりと喉が動いたか(飲み込んだか)確認する。
STEP6:
すぐに寝かせてしまうと食事を戻してしまうので、食後は20分程度姿勢を維持させてあげましょう。
老犬がどうしても流動食を受け付けず飲み込まない場合は、無理に与えると窒息する危険性があります。
どうしても食べない場合は、無理に与えずに獣医師に相談して点滴処置で栄養補給することをおすすめします。
まとめ
老犬の食事について量や回数、食べない時の対処法を中心に幅広くご紹介致しましたが、老犬問わず犬の食事の基本は「その犬に合ったものであるか否か」であり、必ずこうでなければいけないと言う決まりはありません。
一概に老犬と言っても、健康状態、もともと持っている体質、運動量、生活環境等様々な要因を考慮した上で適した食事は何なのか考えなくてはいけません。
食事を含め老犬介護全般は、細かく考えれば100頭いれば100通りの方法があり、どんなに介護に慣れている飼い主さんであっても初めは戸惑います。
何より大切なことは、愛犬にとって食事を摂ることが負担にならないように考えてあげる飼い主さんの思いやりなのではないでしょうか。