人間や犬には生理がありますが、猫にはその生理がないというのは驚きです。
本来、生理は妊娠するために必要な現象でありますが、猫の生殖機能は人間や犬とは少し違います。
そのため、猫に生理のような出血がみられた場合は、なんらかの病気に罹っている可能性があります。
まずは猫の生殖機能を知り、異常とみられる出血について疑われる病気を解説してきます。
そもそも生理とは?人間と犬の場合
生理とは、医療用語で「月経」と呼ばれる現象のことです。
そのしくみは、人間の場合は排卵後に、受精卵を迎えるため子宮内膜を厚くします。
厚くなった子宮内膜は、受精卵にとってのふかふかのお布団の役割となるのです。
しかし、受精がなかった場合、この厚くなった粘膜ははがれおち、血液や卵子とともに体外に排出されます。
これが月経と呼ばれる現象です。
犬の生理は「発情期」と呼ばれ、人間とは違い半年~1年という長い周期を経て起きます。
また、排卵前に生理が起き、その後発情期へと移行します。
実は哺乳類では生理があるほうが珍しく、人間のほかには犬や高等霊長類だけだと言われています。
猫の生殖機能、発情の時期や周期とみられる行動
なぜ、猫には生理がないのでしょうか。
それは、猫が人間や犬とは違った排卵のしくみを持っているからです。
猫の排卵のしくみ
人間や犬の排卵には一定の周期があります。
しかし、猫の排卵には周期というものはなく、交尾の刺激によって排卵されます。
前者を「自然排卵動物」、後者を「交尾排卵動物」と呼びます。
排卵の時期が明確ではないため、受精卵を迎える準備ができない=子宮内膜が厚くならず、はがれおちることがありません。
よって、猫には生理がないのです。
猫の発情の時期と周期
猫の排卵に周期はありませんが、一般的に発情するのは春と夏の年に2回だと言われています。
猫の発情には日照時間が関係しており、春と夏は日照時間が長いためです。
しかし、室内飼いでは日照時間に影響を受けることはありません。
よって、1年を通していつでも発情できるそうです。
発情期は「発情前期」「発情期」「発情後期」といったステージに分かれています。
発情前期
発情と言われる最初の段階であり、前期を経て本格的な発情期に入ります。
発情前期は1~2日ほど続き、この時期はまだオス猫を受け入れようとはしません。
食欲が増したり、しきりに窓を覗くなどの落ち着かない様子がみられ始めます。
発情期
発情期は4~10日ほど続きます。
この時期には、
・外に行きたがる
・いつもとは違う鳴き声で鳴く
・物や人にすりすりと頭をこする
・尿の匂いがきつくなる
・腰を持ち上げたような伏せの態勢をとる
・外陰部が腫れたように膨らむ
などの行動がみられるようになります。
発情後期
交尾後は、50時間ほどで排卵が起きます。
この時期はもう後期に入っており、オス猫を受け入れようとはしなくなります。
発情期に交尾が行われなかった場合、卵胞は衰退していきます。
生理のような出血があった!疑われる病気とは
生理がない猫ですが、そのような出血があった場合には生殖器系か泌尿器系の病気が考えられます。
避妊手術をしている猫の場合は生殖器系の病気の可能性は低くなりますが、陰部と尿道口は隣接しているため、わかりづらいことが多いです。
他にどのような症状がみられるのか、併せて観察してみましょう。
生殖器系の病気・トラブル①子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は子宮の病気のなかで最もかかりやすいと言われています。
この病気では、子宮の内部に血や膿が溜まります。
5歳以降のメス猫に多く、子宮の頸部が緩んでいる発情期や分娩後に、細菌が子宮に侵入することで発症します。
・いつもより水を多く飲む
・おしっこの量が多くなる
・膿でお腹が膨らむ
・陰部から悪臭がする膿が出る
などの症状が現れます。
進行すると、膿で子宮が破れて短時間で死に至ってしまう怖い病気です。
生殖器系の病気・トラブル②子宮がん
子宮に腫瘍ができた場合、おりものに血や膿が混じっていることがあります。
・食欲や元気がない
・下痢や便秘
・お腹が膨らむ
などの症状がみられます。
猫の場合、犬ほど発症する確率は高くありません。
生殖器系の病気・トラブル③交尾で膣が傷ついた
交尾を行った場合に、陰部や膣が傷つき出血することがあります。
オスの陰茎には小さな棘があり、これがメスの膣内を引っかくためです。
性器を刺激するためですが、交尾中は痛みを伴うと言われています。
泌尿器系の病気・トラブル①膀胱炎
陰部から出血する泌尿器系の病気で、最も多い病気が膀胱炎です。
メス猫は尿道が太く短いために細菌が侵入しやすく、それによって炎症を起こしてしまいます。
細菌のほかに、結石や結晶によって膀胱粘膜が傷つき発症することもあります。
・トイレの回数が多くなる
・排尿態勢をとるけれどおしっこが出ていない、もしくは少量しか出ない
・血尿が出る
・うめきながら排尿しようとする
・発熱する
などの症状がみられ、進行するとお腹を触るのを痛がったりします。
泌尿器系の病気・トラブル②尿路結石
尿路結石はオス猫がなりやすい病気です。
それはオス猫の尿道が細く長いために、小さな結石でも詰まりやすいからです。
しかし、メス猫は発症しないというわけではありません。
原因としては食生活が挙げられ、食生活を見直すことで予防することもできる病気です。
・血尿が出る
・トイレの回数が増える
・おしっこが出ない、または少量しか出ない
・触ろうとしたら嫌がる
などの症状がみられます。
放置して病気が進行すると、尿毒症になり死に至る危険性があります。
泌尿器系の病気・トラブル③溶血性貧血
溶血とは、赤血球が破壊されることをいいます。
よって溶血性貧血では、酸素を運ぶ赤血球が機能しなくなることで、全身が酸欠状態となってしまいます。
・食欲、元気がなくなる
・運動しようとしない
・呼吸を苦しそうにする
・口腔粘膜が白っぽくなる
・黄疸が出現する
・尿の色が赤っぽくなる
などの症状がみられます。
泌尿器系の病気・トラブル④中毒を起こした
猫の中毒では、タマネギやユリ根が有名ですね。
このような中毒となるものを食べた場合、
・血尿が出る
・吐く
・ふらふらする
・口腔粘膜が白くなる
などの症状が現れ、急性腎不全を起こしてしまうこともあります。
食べたとわかったら、症状が出る前にすぐに病院を受診しましょう。
まとめ
猫は人間や犬と違い、排卵のしくみが異なるために生理はありません。
しかし、もしもそのような出血があった場合には、それが異常であると判断することができます。
生殖器系なのか、泌尿器系の病気なのかはわかりづらいことが多いですが、自己判断せずすぐに病院に駆けつけましょう。
また、生殖器系の病気は避妊手術をすることで、発症のリスクを下げることができます。
病気のなかには予防できるものもたくさんありますので、日々の健康管理をいま一度見直してみるのも良いかもしれません。