最近では、殺処分をなくす活動が行政も含めてあちらこちらで行われています。
とはいえ、平成30年12月28日に環境省から発表された平成29年度の猫の殺処分数は34854頭です。
保護猫を引き取りたいという方も増えましたが、条件が厳しく里親になれなかった、という声も。
そこで今回は、猫を保健所や保護施設から引き取る条件や方法と、それぞれの違いについてご紹介します。
猫を保健所から引き取る条件や方法は?
各地域には保健所がありますが、愛護センターは地域によってあったりなかったりですね。
保健所は基本的に人間を相手とした業務を行うため、猫が持ち込まれても一旦保護したあとは、愛護センターに託します。
愛護センターがない地域では、保健所が愛護センターと同様の業務を行い、一定期間過ぎると持ち込まれた猫を殺処分しなくてはいけません。
では、保健所や愛護センターから猫を引き取るには、どんな条件や方法なのかを見ていきましょう。
まず保健所に持ち込まれる猫について知ろう
保健所に持ち込まれる猫は、野良猫、捨て猫、迷子猫、飼育放棄された猫、飼育崩壊した猫です。
保健所に連れていけば助けてもらえる、と素直に思い込んで持ち込む方もいますが、ほとんどは猫がどうなってもかまわない、殺処分されるのをわかっていて持ち込むなどです。
飼育崩壊した家庭からの猫は、近隣住民からの苦情が保健所に入ることで保健所が引き取りにいくのです。
保健所や愛護センターから引き取る条件
保健所や愛護センターから猫を引き取る条件は、
- 20歳以上65歳未満であること
- ペット可物件であることを証明できる文章
- 猫を飼育し続けることのできる収入や費用があること
- 同居者全員の同意
- 同居者に猫アレルギーがいないこと
- ペットを飼育できない物件に転居の予定がないこと
- 終生飼養の誓約書に記入すること
- 飼育講習を受けること
- マイクロチップの装着
- 不妊去勢手術を受けさせること
- センター長との面談(ない場所もある)
です。
保健所や愛護センターによって異なる部分もありますが、このような条件となってします。
数十年前に比べれば、かなり条件は緩くなっていますし、猫の一生をお世話する上で当たり前のことで、そこまで厳しい条件ではありません。
保健所から猫を引き取る方法
保健所や愛護センターから猫を引き取る方法は、
1.保健所もしくは愛護センターのHPで里親募集の確認をする
2.条件を確認し、里親希望登録を行う
3.保健所や愛護センターの行う譲渡会に参加
4.事前調査票に記入
5.譲渡講習会を受ける
6.猫と対面
7.引き取ることを決めたらスタッフに相談
8.許可がおりれば譲渡完了
です。
ここで注意したいのが、保健所や愛護センターによっては譲渡会当日に引き渡しが行われることもあり、そうなると事前に猫を迎え入れる準備をしておく必要があります。
また、申し込み希望者が他にいれば抽選となってしまうため、保健所や保護センターによく確認しておくことが大切です。
猫を保護施設から引き取る条件や方法
猫を保護する団体などの保護施設は、全国に多数あります。
保健所や保護施設の殺処分寸前の猫を引き取って里親を探したり、殺処分寸前の猫の情報を流していたり、飼育崩壊やブリーダーから救出した猫などの里親を探しています。
猫の病気治療や不妊去勢手術、ワクチン接種やノミダニ予防など引き取った猫のケアをしているため、費用の問題から保護施設に引き取れる猫には限りがあります。
ここでは、猫を保護施設から引き取る条件や方法について見ていきましょう。
保護施設から引き取る条件
保護施設から猫を引き取る条件は、
- 家族構成(年齢・同居人・独身・子供の有無・学生・シニアなど詳細に)
- 職業や収入が安定していること
- 家を空けている時間が少ないこと
- 旅行や入院時など緊急時の対策・後継人を準備すること
- ペット可の物件であることを証明できる書類
- 家の間取りの提出
- 先住猫や犬の有無
- 定期的な報告ができること
- 保護施設からの定期的な訪問が可能なこと
- マイクロチップの装着義務を守れること
- 不妊去勢手術を行うこと
- 毎年のワクチン接種・ノミダニやフィラリア予防ができること
- 手作りご飯を与えること
- 終生飼養の誓約書に記入すること
- 完全室内飼育ができること
- 身分証明書や名刺、写真などの提出
- 引き取る猫にかかった医療費などの負担(平均1万~2万円)
- 引き渡しの際の交通費の負担
などです。
保護施設によって多少の違いはありますが、保護施設の条件は保健所以上に細かいところまで決めているところがほとんどです。
保護施設の条件が厳しい理由
保護施設から猫を引き取るのは、条件がとても厳しいことで有名です。
10組が申し込んで、許可が下りるのは1組程度という実態を知っていますか?
保護施設の条件は一見厳しいようにも見えますが、実は条件よりも面談で許可が下りないことがほとんどです。
しかし、それは猫のためを思ってのことであり、辛い経験を2度とさせたくないという思いから里親選びは慎重に行われます。
どんな状況で猫が保護されることが多いかを見てきた保護施設だからこそ、ちょっとでも不安要素があれば許可が下りなくなってしまうこともあります。
実際、安易な気持ちで猫の里親に申し込む人も増え、引き取ったあとに保健所に持ち込んでいたり、飼育放棄されていたことも多々あるため、年々厳しくなってしまうのですね。
保護施設から引き取る方法
猫を保護施設から引き取る方法は、2つあります。
まずはHP上で里親を募集している猫の場合の手順です。
1.保護団体のHPで里親募集の猫に申し込む
2.必要事項を入力して事前審査を受ける
3.保護施設から連絡がきて、事前審査がOKであれば対面日時を決める
4.対面する
5.気に入ればスタッフに里親になりたいことを伝える
6.本審査や面談を受ける
7.保護施設の自宅訪問を受ける
8.審査に通れば、1ヶ月のトライアル期間に入る
9.1ヶ月後に里親になるか辞退するかを伝える
保護施設の譲渡会の場合
保護施設の譲渡会に参加した場合の方法です。
保護施設が広場やお店、自治会を借りて里親を募集している猫ちゃんをお披露目する場です。
譲渡会の場合は、直接猫たちをみて選ぶことができるため、ある程度の性格やご家族との相性を見る事ができます。
- 保護団体のHPで譲渡会のお知らせを見る
- 譲渡会に参加する
- 引き取りたい猫がいれば、申し込みをする
- 審査と面談を受ける
- 保護施設の自宅訪問を受ける
- 審査に通れば1ヶ月のトライアル期間に入る
- 1ヶ月後に里親になるか辞退するかを伝える
です。
トライアル期間というお試し期間がある保護施設がほとんどですが、ない施設もあります。
しかし、どの保護施設でも必ず引き取る前の自宅訪問はあり、どんな飼育環境なのかを見せる必要があります。
結局、保健所と保護施設は何が違うの?
ここまで、保健所や保護施設から猫を引き取る条件や方法について見てきましたが、それぞれを単独で見ていくと保健所と保護施設の違いは気付きにくいかもしれません。
条件が細かく設定されているのは保護施設、ということはお分かりになっていただけたかもしれませんが、条件自体はそこまで大きな違いではありません。
ここでは、保健所と保護施設の違いについて見ていきましょう。
猫の健康状態や性格の把握
保健所や愛護センターでは、猫の健康状態や性格の把握はできていません。
推定年齢や簡単な健康診断は受けていても、ワクチン接種や不妊去勢手術、病気の治療などまでは行えません。
税金でまかなわれている施設のため仕方のないことですが、引き取ったあとに自分で猫を連れて動物病院を受診する必要があります。
一方で、保護施設では健康状態や性格などがわかっており、治療が必要な猫に対しては保護施設が治療をしてくれています。
その猫がどんな状態なのか、どんな性格なのかが詳しくわかるため、保護施設と今後の飼育方針について相談することも可能です。
保健所では抽選があることも
まずは、引き取りたい猫がいて申し込みを行った場合の違いです。
その猫に他の人からも申し込みがあった場合、保護施設ではどの家庭がその猫に一番適しているかという基準で選ぶことになりますが、保健所の場合では抽選なのです。
お役所なので公平に、という仕方がないことではありますが、保健所や愛護センターから引き取る場合では抽選になることもあるということを覚えておいてください。
引き取るまでの日数の違い
保健所や愛護センターから猫を引き取る場合では、対面したその日に連れて帰れることもあります。
その地域の保健所や愛護センターによって異なるため、事前に確認しておくといいでしょう。
また、保護施設からの引き取りでは、対面してから1週間後くらいにトライアルに進めるかダメなのかの連絡が入るため、その日に猫を引き取れるということはありません。
トライアル期間
保健所や愛護センターではトライアル期間はありません。
1度里親になると決まって連れて帰ったら、最期までその猫のお世話をしていく責任があります。
こんな性格だと思わなかった、やっぱりこの猫はイヤ、なんて思っても保健所や愛護センターに返すことは出来ないのです。
一方で、保護施設ではそういった問題を避けるためにも、1ヶ月程度のトライアル期間を設けています。
1ヶ月間、猫とお試し生活を送って決めてください、ということが前提なので、その期間に猫との相性や家族と猫の相性などを確認することができます。
また、保護施設では定期的に報告したり訪問があるため、引き取った後も猫の相談に乗ってくれます。
この違いは、かなり大きいのではないでしょうか。
猫を保健所や保護施設から引き取る条件を知っておこう|まとめ
今回は、猫を保健所や保護施設から引き取る条件や方法と、それぞれの違いについてご紹介しました。
保健所や愛護センターは公的な機関で、保護施設は民間団体ということからさまざまな違いがあることをお分かりいただけたのではないでしょうか。
猫の殺処分を減らすためにも、1人でも多くの方に里親になってもらいたいとは思いますが、里親であっても、ペットショップからの購入であっても、その猫の一生が幸せになるものにしてあげてくださいね。