猫の祖先は、アフリカの砂漠地帯で暮らしていたリビアヤマネコです。
そのため、猫の体は乾燥した環境でも水分をムダなく利用できるしくみになり、腎臓は尿を濃縮する機能に優れるようになりました。
こうした体のしくみであるがゆえに、猫は泌尿器系の病気にかかりやすい動物でもあります。
飼い主さんは、猫の尿に対していつも注意を払ってあげましょう。
尿検査は定期的に行うのが理想です。
猫の尿検査で分かることやその費用、必要な量などを詳しく見ていきましょう。
猫の尿検査でわかる主な病気
秋口から冬にかけての寒い時期は、水をあまり飲まなくなる影響で、尿が濃くなり、膀胱炎をおこしやすくなります。
また、高齢猫は、腎臓病の初期症状として、薄い尿をするようになります。
症状が出にくいこともあり、気づいた時にはすでに進行している場合もあります。
尿検査で分かることは、さまざまな病気です。
どういった病気なのか、主な病名を挙げてみました。
尿路結石
腎臓から尿管、膀胱、尿道の中に結晶や結石ができる病気です。
膀胱や尿道を傷つけたり、尿道に詰まったりします。
猫下部尿路疾患(FLUTD)の代表的な病気の一つにあげられます。
結石は砂粒くらいの小さなものから、数cmの固まりまで大小さまざまです。
トイレに行っても尿が出なかったり、排尿時に痛みが出て鳴いたり、血尿などの症状が表れます。
尿路結石にかかって尿道が詰まり、おしっこが全くできない状態になると、急性腎不全になって尿毒症を引き起こす危険もあります。
膀胱炎
細菌に感染して膀胱に炎症が起こる病気です。
猫の尿は濃くて細菌が繁殖しにくいので、人や犬に比べると、この病気になりにくいようです。
今まできちんとトイレができていたのに、急に粗相をしてしまう原因に、膀胱炎の可能性もあります。
筆者の飼い猫がそうでした。
腎臓病
腎臓の機能が長い年月をかけて徐々に低下していくことで起こります。
尿を濃縮する機能に優れた腎臓をもつ、避けては通れない病気で、猫の宿命ともいえます。
高齢の猫の死因の上位にあげられます。
糖尿病
猫の糖尿病というと、ビックリされる方も多いですが、糖尿病は人間だけの病気ではなく、猫がかかるのも珍しくありません。
人間と同じで、食べ過ぎや運動不足、肥満などが原因と言われています。
中でも食事には注意が必要で、炭水化物過多などバランスが崩れている食事を与えていることも関係があるようです。
尿の採取方法
尿検査をするには、尿を液体の状態で採る必要があります。
飼い主さんが自宅で採った尿を動物病院に持ちこんでも検査は可能です。
ただし、混入物が多かったり、保管状態によって検査ができなかったり、正しい検査結果に影響する場合があるので注意は必要です。
まずは、かかりつけの獣医師に相談してみてください。
自宅での採取方法のポイント
猫の尿を採取するなんて、ハードルが高すぎる・・・という飼い主さんも多いと思いますが、ポイントをおさえれば意外と簡単に採尿可能です。
大切なことは、できるだけ猫に負担をかけないこと。
また、失敗しにくい方法を選ぶこともポイントになってきます。
採尿には、いくつか方法があります。
トイレタイプや愛猫にあわせた方法で挑戦してみましょう。
おたまで採る
猫が尿をしている時に、おたまのようなもので直接キャッチします。
猫の尿をし始めるサインって、飼い主さんだと分かること、多いですよね?
落ち着きがなくなったり、砂を足で掘ってみたり、臭いをかぎ始めたり…。
トイレで猫がオシッコの体勢になって腰を落とした瞬間に、後ろからお玉をおしりの下に差し入れて尿を採り、容器に移し替えます。
ですが、普段と違うことをする飼い主さんの行動に、警戒してしまう猫も少なくありません。
猫が警戒して尿を我慢しないように注意しましょう。
ビニールシートで採る
猫砂の上にビニールシートを敷き、たまった尿を採ります。
トイレをいつも同じ位置に尿をする猫には、この方法はやりやすいです。
砂の量やビニールのシートの位置を調整し、砂が混ざらないように気を付けましょう。
比較的やりやすい方法ですが、トイレにいつもと違うものがあるのを気にする、神経質な猫には大変かもしれません。
ウロキャッチャー
ペット専用の採尿器。
棒の先端に、尿を吸収させるスポンジがついている商品です。
排尿時にうしろから忍ばせ、尿をスポンジにかけます。
筆者の猫が膀胱炎になったときは、こちらを使って採取しました。
よく廊下に粗相をしていましたので、その尿をこちらにしみこませ、動物病院へ持参していました。
その時は、動物病院から購入していたのですが、アマゾンなどの通販サイトでも購入可能です。
一本100円以内で購入できるようです。
システムトイレで採取
猫に負担がかからず、採尿に失敗することも少なくカンタンです。
システムトイレは、下側のシートを敷かずに使用すると、猫砂を通過した尿を引き出しに溜めることができます。
その尿を採取するだけです。
猫は普段通り排尿するだけなので、ストレスを与えずに簡単に採尿ができます。
システムトイレを使用している猫は、この方法が一番オススメです。
病院での採取方法
病院での採尿法には「カテーテル」「膀胱穿刺(ぼうこうせんし)」などがあります。
「カテーテル」とは、猫のお尻から直接カテーテルを挿入し、膀胱から尿を採取します。
この方法が一般的でしたが、最もきれいな尿が採れ、猫の負担が比較的少ないので、「膀胱穿刺」採尿が主流となりつつあります。
膀胱穿刺のやり方としては、エコーで膀胱を確認しながら、注射針で直接、膀胱から採尿します。
自宅で取った尿の保存方法
自宅で採取した尿は、密閉容器に入れて、出来るだけ早く動物病院に持っていきます。
尿を入れる容器は、お弁当などについてくるしょうゆ入れのようなものでも大丈夫です。
また、採取する尿量も、あの容器に入る量で充分で、多くの量は必要ありません。
動物病院によっては、注射器のような形状の専用の容器をもらえる場合もあるので、事前に相談してみてください。
それから、ポリ袋などに入れて、すぐに動物病院へ。
採尿日時も忘れずに書いておきましょう。
猫の尿は時間経過とともに変化するので、すぐに動物病院に行くのが無理だとしても、排尿後は3~6時間以内に動物病院に持っていくようにしましょう。
どうしても時間が空いてしまう場合は、冷蔵庫で保管します。
冷蔵保存(4℃)であれば1週間経っていてもそれほど変化しないという報告もあります。ですが、できるだけ新しいのに越したことはありません。
尿検査の気になる費用は?
費用については、動物病院によりまちまちですので、一概には言えません。
また、猫下部尿路疾患(FLUTD)が疑われて尿検査する場合と、健康診断として他の血液検査などと一緒に行う場合とでは、費用が違ってきます。
尿検査を含む健康診断では、猫の健康状態や、注意することなど分かることが多いので、一年に一度は受けるようにしましょう。
動物病院によっては、キャンペーン期間があったりなど、お得な費用で受けられる時期もあります。
猫の尿検査で分かる病気とは?費用や必要な量、採取方法まとめ
今は、昔と比べてペットに対しての健康意識も高くなり、人と同じような健康診断を受ける時代となりました。
健康診断によって愛猫の体調を知ることができますし、病気を早期発見できる場合もあります。
私は、健康診断や予防接種の時は、獣医師や動物病院のスタッフの方たちとの相性を見る場であるとも考えています。
猫は誰にでもなつくとは限りません。
特に、神経質な猫ならなおさらです。
いざ病気になったとき、そして入院になったとき、安心して猫を預けることができる病院かどうか、観察することも大切です。