インテリアショップや100円ショップなど、身近なところで買うことができる芳香剤ですが、実は猫にとって害であることを知っていますか?
ペットを飼っていると臭いは気になるものですが、猫が芳香剤の匂いを嗅いだり舐めたりするのはとても危険なことです。
危険な理由と、舐めた場合はどのような害があるのか、安全性のある消臭方法をご紹介します。
猫にとって危険な芳香剤、どのような種類がある?

芳香剤は猫にとって危険なものですが、芳香剤とはどのようなものを示すのでしょうか?
インテリアに馴染むおしゃれなものや、アロマタイプのものなど、いろんな種類の芳香剤がありますね。
まずはどんなものが芳香剤に当てはまるのかを知りましょう。
アメリカ発祥の「フレッシュセンツ」
フレッシュセンツとはいわゆる「匂い袋」の芳香剤です。
特徴として、香りが強いことや長持ちすることが挙げられます。
置き型タイプのものとは違い設置場所を考える必要がないため、クローゼットの中やカバンの中などにも使用することができます。
また、掃除機の紙パックの中に入れると、掃除中に良い香りが広がります。
猫の手の届かないところにと、使用している人もいるようです…。
コスパが良い「置き型」
1番スタンダードな置き型タイプは、今やどこのお店にも売っている芳香剤ですね。
国内メーカーも多く、種類が豊富でどれを買って良いのか迷うほどです。
このタイプは香りの効果に加えて消臭効果があるものが多いです。
値段もお手頃なものが多く、使用頻度は1番高いのではないでしょうか。
おしゃれな「ディフューザー」
数年前から流行っているスティックタイプの芳香剤です。
アロマオイルが入った入れ物にスティックを漬けることで香りを広げます。
見た目がおしゃれでインテリアとしても映えますね。
またアロマオイルを交換することで継続して使うことができますし、スティックの本数により匂いの強度を変えることができます。
リラックス効果がある「アロマやお香を焚く」
アロマの原料は花や葉、茎などで、これらの香り成分を抽出してオイルとしたものです。
お香は香木の植物を原料としており、それを乾燥させたものをそのまま、または粉末状にしたものを言います。
加熱することで香りを立て、その香りにはリラックス効果などの作用があります。
リフレッシュしたいときや寝る前に使用する人も多いようですね。
なぜ猫には害があるのか、その理由

猫が食べてしまうと中毒を起こしてしまう食べ物があるように、芳香剤の香りにもそのような危険性があるものがあります。
犬には危険でないのに、なぜ猫には害があるのでしょうか?
猫の特徴を踏まえて理由を解説します。
芳香剤に配合された植物成分の感受性が違う
猫が食べてはいけないものに、「観葉植物」があるのはもはや常識ですね。
猫には苦手としている植物が多くあります。
体に害をもたらすのは、決して食べることだけではありません。
例えば、人がコーヒーの香りを嗅ぐとリラックス効果やアンチエイジングの効果があり、これは実験により科学的に証明されています。
このように、香り成分は身体に作用し十分な効果をもたらすことができるのです。
しかし、それは良い効果だけでなく悪い効果も然りです。
植物による様々な作用
では、なぜ植物が身体に悪いのでしょうか。
皆さんが病気をしたときや不調のときに薬を服用すると思いますが、その薬には様々な植物成分が含有されています。
また、ニュースでもよく取り上げられる麻薬や大麻のもとは植物ですよね。
このように、植物には種類によってさまざまな作用をもたらします。
良い効果が出ればそれは「効能」となり、悪い効果が出れば「副作用」となるのです。
薬が個人の体質によって効果が出やすかったり、副作用が強く現れたりするように、猫には中毒作用を発揮させてしまいます。
そのため、人間にはリラックス効果などの良い作用をもたからといって、猫にも良いとは限らないのです。
動物の種類、そして個々の体質によっても毒となるものは変わるということを覚えておきましょう。
猫は植物を分解・解毒できない
人間や犬は、お肉や野菜も食べることができる雑食性である一方で、猫は小動物や魚を捕らえて食べる肉食性です。
食べるものが異なるということは、身体の消化機能が異なるということです。
穀物や野菜などの植物を食べない猫は、人間や犬のように植物を上手く消化することができません。
そのため、植物成分が含まれる芳香剤やアロマオイル、お香は猫にとって分解できないものとなります。
そして、解毒は主に肝臓でグルクロン酸抱合によって身体にとって有害なものを無毒化し、尿中に排出させる働きがありますが、猫の肝臓にはグルクロン酸抱合能がありません。
猫はこの機能を持たないために、植物成分で毒となるものを解毒できずに身体のなかに留めてしまい、中毒を引き起こしてしまうのです。
猫にとって危険とされる香り成分

猫に害のある香り成分は数百種類もあると言われていますが、そのなかでも芳香剤に多く使用され、猫にとっても危険といわれるものをご紹介します。
これらの成分は、化粧水やハンドクリームなどの身近なものにも使われているので、生活用品の「成分」という項目をいちど確認してみると良いかもしれません。
用途は多様「フェノール類」
芳香剤やエッセンシャルオイル、消毒薬にも使用されるフェノールですが、猫にとっては危険な香りとなります。
多岐にわたり使用されているため、どのような香りにフェノールが多く含有されているかは確認しておきましょう。
- シナモン
- オレガノ
- バジル
- ミムラ
- タイム
- カッシア
- クローブ
- リーフ
- タイムホワイト
- パチュリー
- サマーセイボリー
- ウィンターセイボリー
柑橘系に多い「リモネン類」
猫が苦手なオレンジなどの柑橘系にはリモネンという成分が多く含有されています。
香りが爽やかで好きな人も多いのではないでしょうか?
こちらはシャンプーや食器用洗剤などにも使われていますね。
- オレンジ
- レモン
- ベルガモット
- グレープフルーツ
- ライム
- ブラックペッパー
人間も過剰摂取には要注意「ケトン類」
脂肪を燃焼させダイエットに効果があるケトン類ですが、過剰に摂りすぎるのは危険だと言われています。
- ローズマリー
- ラベンダー
- カンファー
- ヒソップ
- ペパーミント
- スペアミント
- キャラウェイ
- セージ
森の香り「ピネン類」
ピネンの主成分は針葉樹に多く含まれることから「森の香り」などと例えられます。
副交感神経(リラックスする神経)を刺激することから、よく入浴剤にも含有されていますね。
- ユーカリ
- ティーツリー
- パイン
- ジェニパーベリー
- サイプレス
- フランキンセンス
どのような中毒症状が現れるのか

中毒とは、毒性のある物質が体内に取り込まれることで生じる身体の機能障害のことをいいます。
猫には、特定の植物に含まれる成分を分解する機能がないために、毒物を排出できずに中毒症状を引き起こしてしまいます。
中毒には段階がありますが、急激に進行する場合もあります。
まずは段階を追って出現する症状をみてみましょう。
よだれが出て嘔吐する、下痢になる
嘔吐や下痢は人間の食中毒でもみられる症状ですが、これは生体防御反応といって、生きていくためにも必要不可欠な反応です。
猫は、肝臓の解毒作用によって分解されない物質をどうにかして外に排出しようと、嘔吐や下痢を引き起こします。
まずはこの症状が出た時点で、正常ではないと判断できますね。
震え、けいれんを起こす
毒性が高く症状が進行すると、中枢神経を刺激することから震えやけいれんなどの症状が現れます。
また、瞳孔が縮まる縮瞳がみられたり錯乱状態となることもあります。
貧血、血尿がみられる
中毒により赤血球が破壊され、溶血性貧血を引き起こします。
破壊された赤血球は尿として排泄されるため、血尿となります。
血尿以外にみられる貧血症状としては、耳や口の中などの粘膜が白くなったり、頻脈などです。
呼吸が早い・荒いなどの呼吸困難
呼吸困難にはさまざまな原因が考えられます。
- 酸素を運搬する役割を持つ赤血球が破壊され、身体のなかが酸素不足になった。
- 毒物が呼吸機能を刺激したことで機能障害となり呼吸器官が正常に働かなくなった
- 腎不全や心不全を起こしたことで酸素の運搬が上手くいかなくなった
症状は重度であり、命の危険がある状態です。
このような症状が現れる前に、中毒症状に気づき対応しなくてはいけません。
猫が芳香剤を舐めた時はどうなる?

芳香剤を家に置いていて、誤って猫が舐めた場合はどうなるのでしょうか?
芳香剤の成分は舌から吸収され、舌に付着した成分はグルーミングをすることにより皮膚からも吸収されることになります。
吸収された成分は静脈に入り、やがて全身を巡ります。
解毒されないため、量によっては中毒を引き起こし症状が現れます。
こうなった場合、飼い主はどう対処すべきなのでしょうか。
飼い主ができる良い対応とは
猫が誤って中毒物質を食べてしまったときの対応として、牛乳を飲ませるといいなどの方法を聞いたことはありませんか?
しかし、中毒は命に関わる事です。
独自の判断でこのような方法を試したり、症状が出ていないからといって様子をみることは危うい判断だと言えるでしょう。
猫が芳香剤を舐めたとわかったら、
- なにを舐めたのか
- どのくらいの量を口にしたのか
- 口にしてから経過した時間
などを確認したら、必ずかかりつけの病院に相談しましょう。
中毒は時間との勝負です。
臓器の機能不全が現れる前に、早めの対応を心がけましょう。
良い消臭方法とは?安全性があるものを選択しよう

猫にとって安全である芳香剤は、現時点ではありません。
しかし、ペットを飼っているとどうしてもペット臭が気になってしまいますよね。
猫は犬ほど臭いがキツくはありませんが、家のなかにいればトイレなどの臭いが染みついてしまいます。
そのようなときに効果的な消臭方法は、「消臭剤」を使用することです。
しかし消臭剤のなかでも、猫にとっては危険であるもの、安全であるものがあります。
消臭剤の種類を知り、安全性が高いものを選びましょう。
危険な消臭剤
危険性のある消臭剤のタイプは2つあります。
- 臭い成分を膜で包み込む消臭スプレー
- 塩素系の消臭スプレー
臭いを包み込むタイプではファブリーズなどが挙げられます。
これらの消臭スプレーは、含まれている化合物質が猫の皮膚に合わずにアレルギー性皮膚炎などを引き起こすことがあります。
また、塩素系では高い消臭効果と殺菌作用が期待できますが、猫が誤って口にしてしまったときの危険性を考えると使用しないほうが良いでしょう。
安全な消臭剤
安全性が高いといわれる消臭剤は3つあります。
- 次亜塩素系の消臭剤
- バイオ系の消臭剤
- 二酸化塩素系の消臭剤
これらは、除菌力は弱いけれど強力な消臭力をもっています。
猫の糞尿のもとといわれる「コーキン」や「フェリニン」という物質を分解するため、トイレ臭に効果を発揮するようです。
我が家でも次亜塩素系の消臭スプレーを使用していますが、一瞬にして臭いが消えます。
日常的にできる消臭方法
消臭剤だけでは間に合わない場合はどうすれば良いのでしょうか?
まずは臭いが家の中に滞ってしまう原因を考え、ひとつずつ排除していきましょう。
ペットの臭いの主な原因はトイレのアンモニア臭です。
トイレはこまめに掃除をし、トイレ砂も臭いを吸収してくれるものを選びましょう。
次に、臭いは家の壁や布製品に染みつくので、それらから臭いを取り除くよう心がけましょう。
布製品は、ソファーやカーテン、クッション、猫用ベッドなどがありますね。
猫にとって安全性の高い消臭スプレーを使用して、それらを消臭するもしくは、洗えるものは定期的に洗うと良いでしょう。
そして、1日に1回は換気をして家の中の空気を一掃するようにしてください。
良い香りがなくても、新鮮な空気は心をリラックスさせてくれるものです。
猫に負担がない消臭対策を考え、実行してあげましょう。
まとめ

猫に芳香剤は危険であるということは常識になりつつあります。
しかし、このくらい…といって甘く考え使用している人もなかにはいるでしょう。
芳香剤は個々により感受性が異なるため、私たちが思う「このくらい」は猫にとっては致死量になるかもしれません。
また、タンスやクローゼットのなかで使うから大丈夫、といった保証もありません。
そのタンスやクローゼットに猫が入ってしまった、そして知らないうちに閉じ込めてしまっていた、という事例もあるからです。
猫にとって危険なものは、日常生活のなかにも意外と多く隠れています。
飼い主がその危険性を知っているか、知らないかで左右されるのがペットの命です。
「このくらい」と考えず、正しい知識を日々取り入れ愛猫のためにできることを考えてあげましょう。